研究課題/領域番号 |
22770024
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
畑 啓生 愛媛大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (00510512)
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キーワード | サンゴ礁 / タンガニイカ湖 / なわばり性藻食魚 / 生態学 / 種特異的関係 |
研究概要 |
水域生態系の主要な一次生産者である藻類と、それを利用する主要な藻食者である藻食魚において、種のレベルで両者の種特異性や関係性を明らかにし、種間相互作用のネットワークを紐解き、その時空間的な変容を追跡することを目的として研究を行った。本年度は、前年度に現地調査したアフリカのタンガニイカ湖の藻食性シクリッド類について、持ち帰った藻園の藻類の培養を行い、またそれら藻類群落と、各種シクリッドの胃内容物サンプルについて16SrDNAについてメタゲノミクス解析を行い、塩基配列ベースでそれらの藻類組成を分析した。その結果、タンガニイカ湖のシクリッドのなわばり内ではシアノバクテリア類が主要な一次生産者であり、それらが多くシクリッドの胃内容にも含まれ、餌として寄与していることが明らかになった。また藻園藻類とシクリッド魚体について炭素、窒素安定同位体分析を行い、食物網解析を行った。結果、藻食者は今までの顎形態における知見通り、削り取り者と硫きとり者に分けられること、削り取り者と梳きとり者それぞれの中では、同一の炭素、窒素安定同位体比を持つ種はおらず、餌資源分割が成り立っていることが明らかになった。またこの餌資源分割は、なわばりを作る水深を種ごとに厳密に違えていることが重要であることが分かった。 一方、海域のスズメダイの調査では、高知県横浪半島にセダカスズメダイが多く見られるフィールドを見つけ、そこでスズメダイの行動観察、標本採取、さらになわばり内に成立する藻園からの藻類採集を行った。さらに台湾緑島にて、クロソラスズメダイを含む4種のクロソラスズメダイ属魚類の行動観察、標本採取、さらになわばり内に成立する藻園からの藻類採集を行った。これらの分析を今後行って行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンガニイカ湖のシクリッドについても、海域のスズメダイについても、研究実施計画に基づき平行して調査、研究を進めることができ、おおむね計画を達成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は来年度が最終年度になる。最終年度に向けて成果をまとめることを第一の目標とし、既に野外調査やメタゲノミクス解析で得た膨大なデータの解析を進めて行き、論文としてまとめていく。さらに海域の藻食性スズメダイについては、南西諸島で調査を続け、藻食魚とその食藻との関係性の地理的変異について明らかにしていく。
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