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本研究課題は南極海産甲殻類(特にオキアミ類)と原生生物グレガリナ属の寄生関係が、宿主の分布特性や南極海生態系への影響をはかる指標として有用であるかを検証することを目指している。平成22年度は南極海で広く優占するナンキョクオキアミと、沿岸域を生息域とするコオリオキアミに寄生するグレガリナに焦点を当てて調査した。これらの宿主はしばしば生息域が重なることが知られており、分布特性を比較する上で都合が良いと考えた。ナンキョクオキアミからは1種のグレガリナが寄生することが知られていたが、これまで内部寄生虫の報告が為されていなかったコオリオキアミから、2種のグレガリナ寄生種を初めて確認した。遺伝子解析の結果、1種はナンキョクオキアミに寄生するグレガリナと同種の可能性が高く、他方はその近縁種であることが明らかとなった。消化管内の分布を調査したところ、2種のグレガリナで集中分布する部位が異なり、住み分けを行っている可能性が示唆された。コオリオキアミで確認された近縁種は、ナンキョクオキアミでは全く見られないことから、沿岸域にのみ生息するコオリオキアミの生活史に特化した寄生種であると考えられた。上記の遺伝子解析による種同定、およびコオリオキアミに寄生するグレガリナの消化管内分布の結果は国際学会で発表を行なった。現在は両宿主が同時に採集されたサンプルを用いて、同生息海域での寄生率の違いについて調査を行っており、宿主の生息水温や深度、食性に違いがあるかを判断し、生態系を評価する指標としての有用性の検討を目指している。さらに平成23年度には南極海にて現場採集を計画している。
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