研究課題/領域番号 |
22770025
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
高橋 邦夫 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (50413919)
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キーワード | 海洋生態 / 分類学 / 寄生 / 種間関係 |
研究概要 |
本研究課題は南極海産甲殻類(特にオキアミ類)と原生生物グレガリナ属の寄生関係が、宿主の分布特性や南極海生態系への影響をはかる指標として有用であるかを検証することを目指している。平成22年度の分析結果から、これまで内部寄生虫の報告が為されていなかったコオリオキアミから、2種のグレガリナ寄生種を初めて確認し、1種はナンキョクオキアミに寄生するグレガリナと同種の可能性が高く、他方はその近縁種であることが明らかとなった。コオリオキアミで確認された近縁種は、ナンキョクオキアミでは全く見られないことから、沿岸域にのみ生息するコオリオキアミの生活史に特化した寄生種であると考えられた。これらの宿主はしばしば生息域が重なることが知られており、分布特性を比較する上で都合が良いと考えた。平成23年度はナンキョクオキアミとコオリオキアミに寄生するグレガリナに焦点を当て、両種における寄生率や分布特性の特徴を明らかにすべく、両宿主が同時に採集されたサンプルを用いて調査を実施した。また南極海にて両種の深度別の採集を試みるとともに、過去に採集された試料(2003、2005、2008年度)を確保し、引き続き調査を行なっている。これまでに明らかになった分布特性については国際学会で発表を行なうとともに、投稿論文を作成中である。平成24年度も引き続き宿主の生息水温や深度、食性に違いがあるかを判断し、生態系を評価する指標としての有用性の検討を目指し、研究の総括を行なう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終目標であるグレガリナ属の寄生が生態系を評価する指標として有用であるかを検証する上で、研究対象宿主をナンキョクオキアミとコオリオキアミの2種に絞れたことは、研究試料の確保さらにはグレガリナ属出現の普遍性を考慮すると、非常に都合が良いと考えている。より多くの寄生情報を蓄積することで目的達成に近づけるものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最も大きな懸念は、宿主の幅広い採集条件(海域や深度)における試料を確保する点であったが、幸い過去に実施された保存試料を充分に確保出来たとともに、南極海にて新たに試料採集する機会を活かすことが出来た。今後これらの試料を解剖・分析することによって多くの新情報を得られると期待される。遺伝子解析については引き続き研究協力者あるいは業者に外注することで、作業の効率化を目指す。
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