本研究課題は南極海産甲殻類(特にオキアミ類)と原生生物グレガリナ属の寄生関係が、宿主の分布特性や南極海生態系への影響をはかる指標として有用であるかを検証することを目指している。 平成22年度の分析結果から、これまで内部寄生虫の報告が為されていなかったコオリオキアミから、2種のグレガリナ寄生種を確認し、1種はナンキョクオキアミに寄生するグレガリナと同種の可能性が高く、他方はその近縁種であることが明らかとなった。コオリオキアミで確認された近縁種は、ナンキョクオキアミでは全く見られないことから、沿岸域にのみ生息するコオリオキアミの生活史に特化した寄生種であると考えられた。これらの宿主はしばしば生息域が重なることが知られており、分布特性を比較する上で都合が良いと考えた。 平成23年度はナンキョクオキアミとコオリオキアミに寄生するグレガリナに焦点を当て、両種における寄生率や分布特性の特徴を明らかにすべく、両宿主が同時に採集されたサンプルを用いて調査を実施した。 平成24年度は南極海にて過去に両種を深度別の採集された試料(2003、2005、2008年度)を確保し、引き続き調査を継続した。両宿主に寄生するグレガリナにおいては、生息深度による寄生率の違いは認められなかった。一方、コオリオキアミのみの寄生種についてはナンキョクオキアミからは発見できず、生息水温および食性の違いが影響していると示唆された。これまでに明らかになった分布特性については国際学会で発表を行なった。また投稿論文を作成中である。
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