外来種対策は世界レベルで緊急に取り組むべき課題である。限られた駆除努力の中で最大の効果を上げることを念頭において政策決定を行う必要がある。一種の外来種の駆除を考えた場合でも、複数の局所個体群が空間的に独立である場合とそうでない場合とでは、最適な駆除努力の空間配分は異なると考えられる。空間構造に関する知識が得られる事によって、不確実性に頑健な意思決定を行うことのできる数理的手法の開発を目指して研究を行った。不確実性に頑健な意思決定を行うための理論としてInformation-Gap decision theory (Info-Gap)がある。Info-Gap用いて、満たしたい管理目標をより大きい不確実性の中で達成できる不確実性に頑健な戦略を求めることができる。このInfo-Gapの長所は、不確実性のあるパラメータの確率分布型を推定する必要がなく、特に侵入して間のない外来種など、データなどが十分にない場合に有用である。しかし、現在のInfo-Gapモデルは静的モデルで、将来空間構造の知識が得られたり、外来種の分布が変化した際に、駆除努力の空間配分を変更する場合には用いる事ができない。外来種の分布状況が刻々と変わる中で、それに応じて不確実性に頑健な意思決定を行うためには動的なInfo-Gapモデルを構築が必要となる。そこで目的関数の最大・最小化を行う確率的ダイナミックプログラミング法と従来のInfo-Gapモデルをもとに、Dynamic Information-Gapモデルの開発を行った。構築したDynamic Information-Gapモデルにより、外来種の分布状況が刻々と変わる中で、空間構造の特徴と不確実性に頑健な駆除努力の最適配分の関係を体系的に解析することができるようになった。
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