研究概要 |
大型の果実食鳥類であるサイチョウ類は数~数十平方キロに及ぶ行動圏をもち,種子の長距離散布に貢献している可能性が高い。平成22年度は,1)サイチョウ類の単位時間あたりの移動距離と2)飲み込まれた種子の体内滞留時間に着目した研究を行った。 1)単位時間あたりの移動距離の推定では,カオヤイ国立公園において5羽のオオサイチョウと4羽のシワコブサイチョウを対象としたラジオテレメトリー法による行動圏の推定データを再解析し,単位時間あたりの移動距離を推定した。単位時間(1-4h)あたりの平均移動距離は両種でほぼ同じで(オオサイチョウ:0.3-0.5km,シワコブサイチョウ:0.4-0.6km),1kmを超える長距離移動が20%を越した。 2)種子の体内滞留時間の推定では,2010年9月と2011年2月にドウシット動物園の飼育個体(6羽のオオサイチョウと2羽のシワコブサイチョウ)を対象とした給餌実験を行った。対象個体に7-15個のリュウガンDimocarpus longan(種子長:12-14mm,種子重:1.5g)の皮をむいて給餌した。給餌実験は個体あたり1~7回行い,8時~12時にかけて観察した。体内滞留時間の中央値や範囲は,両種でほぼ同じで,オオサイチョウで62分(23-221分,N=247),シワコブサイチョウで62分(29-202分,N=29)だった。種子は健全な状態で吐き戻され,半数以上の種子が1時間以上,体内に保持されていた。 ただし,当初予定していたサイチョウ類の主要な餌植物であるイチジク類,Aglaia spectabilis, Canarium euphyllumを用いた給餌実験は今年度行うことができなかった。
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