研究概要 |
Atg6はホスファチジルイノシトール3キナーゼ複合体を構成して、オートファジーや液胞タンパク質輸送など様々な膜動態を制御している。本研究ではシロイヌナズナatatg6変異体を用いた逆遺伝学解析を進め、オートファジー能の欠損や、液胞形態の異常、生育阻害など多面的な表現型を確認した。Atg6がこのように多様な生命現象を制御するには、様々な機能調節因子・エフェクターが関与していることが予想される。本年度は、GST,FLAG、6xMycなどのタグを付加したAtg6過剰発現株の作成を試み、多数のT1トランスジェニック植物を得た。次年度にホモライン化を継続し、アフィニティ精製によりAtg6の新規結合タンパク質の同定を行う予定である。 Atg6の主要な機能であるオートファジーの生理的意義を明らかにするために、atatg2変異体を用いてオートファジー変異体の新たな表現型を探す試みも行った。特に脂質(生体膜)のターンオーバーにおけるオートファジーの働きに関心を持ち、atatg2変異体から脂質を抽出し、野生株と比較した。通常の生育条件下では目立った違いは見られなかったが、今後、飢餓条件下での脂質組成を調べる予定である。また、二酸化炭素濃度の調整可能な人工気象器を導入したので、高二酸化炭素条件下におけるオートファジー変異体の挙動についても観察を行ってきた。二酸化炭素濃度の違いによる劇的な表現型の変化はないが、RT-PCR解析により、幾つかの遺伝子発現に変化が見られた。
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