研究概要 |
目的葉脈の水輸送が効率的に行われるためには,葉脈が水を供給する葉身の面積(葉脈の流域葉面積)に合うように木部の道管が数や直径が決まる必要がある.こうした葉のサイズと葉脈の水輸送能力のバランスが保たれるためには,形成層が流域葉面積を認識して,水の通り道である道管の直径と数を調節しなくてはならない. 葉脈の道管の数・直径と流域葉面積との関係が何に依存して発生するのかを明らかにするために,本年度は,材料としてタバコの第5葉の主脈と側脈において,発生過程を詳細に追跡するとともに,葉身面積と葉脈木部の形態との関係について詳細な解析を行った。 結果葉身の発達と主脈・側脈の道管の数と直径の増加は,ほぼ同期的に行われ,この傾向は先端から4つの主脈と側脈の分岐付近で変わらなかった.そして,葉内で見られた葉脈の流域葉面積と道管の数・直径の違いは,これらの増加速度によって説明できた.さらに,発生途中に葉身を切除すると,切除されて減少した葉面積に合わせて葉脈の道管の数・直径が変化する傾向が明らかになった.また,葉脈の木部面積と葉脈の流域葉面積の関係は,直線関係で回帰することができ,これらは主脈と側脈で同じ関係にあった. 考察これまでの研究では,茎のアナロジーから,葉脈木部にある道管の数・直径は,葉脈の末端からの距離に依存すると考えられてきた.しかし,今回の測定の結果は,葉脈木部にある道管の数・直径は,葉脈の流域葉面積に依存することを明らかに示した.この知見は,葉脈の水輸送パターンの発生と機能の正しい理解に大きく貢献する.
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