淡水性ラン藻Synechococcus elongatusの硫酸イオン輸送体様輸送体(LtnT)の活性制御に関わる新規タンパク質(LtnE)が、His-Aspリン酸基リレー型情報伝達系(LtnB→LtnA→LtnC)のシグナルのアウトプットに関わるLtnCのC末端領域と相互作用することを酵母Two-hybridシステム(Y2H)により明らかにした。LtnCはN末端領域でリン酸基を受け取り多量体化することが分かっており、LtnCのC末端領域がLtnEと相互作用することは、シグナルがさらに下流のLtnEに流れていることを示している。またLtnDは、N末端領域にcNMP結合ドメインを持ち、C末端領域にLtnCのC末端領域と相同な領域が存在するが、LtnEはLtnDのC末端領域とも相互作用することが示され、LtnBおよびLtnDが受容したシグナルがLtnEで集約されると推定される。LtnTの活性制御ドメインとLtnEとの相互作用もY2Hにより検証したが、相互作用するという結果は得られなかった。また、LtnEやLtnTの活性制御ドメインと相互作用する新規因子のスクリーニングも試みたが、候補因子は得られなかった。 海洋性ラン藻には亜硝酸還元酵素遺伝子の下流に亜硝酸イオン輸送体をコードしていると推定される遺伝子focAが存在しているが、5種類の海洋性ラン藻のfocAを淡水性ラン藻S.elongatusに導入した結果、淡水性ラン藻で活性の出るものと出ないものに分けられ、活性のでないFocAにはそのC末端に保存された領域が存在した。このC末端領域を削ったFocAは、淡水性ラン藻細胞内で亜硝酸イオン輸送活性を持つことも明らかになり、このC末端領域が輸送体の活性を制御していることが示唆された。このC末端領域と相互作用する因子をY2Hにより探索したが、候補因子は得られなかった。
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