本研究は植物における主要時計の探索と生物時計の機能の組織特異的な解析を行うことで、主要時計を始めとする生物時計を器官/組織レベルで理解し、動物との比較から生命の基本システムとしての時計の理解を目指すものであった。本年度は計画より遅れていた組織特異的に生物時計機能を阻害した系統(全24種)についての作出およびホモ化の大半が終了した。全ての系統についてのホモ化が完了していないものの、すでにホモ化されている系統の解析から、花成の促進に関しては篩管束箭部における生物時計機能が重要であることが示唆された。このことは既に報告されている花成ホルモンであるFTの発現部位が維管束篩部であることと一致するものであり、花成制御における篩管束の生物時計の重要性が改めて示された。得られた系統の中には葉の大きさや胚軸伸長などに野生型と異なる表現型を示すものが見られており、これらについても順次解析を進めている。こうした結果から、植物にも生物時計の組織特異的な機能分担が存在していることが示され、今後の細胞や組織レベルでの解析の重要性が示唆された。
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