植物の地上部器官は全て、茎の上端に位置する茎頂分裂組織(SAM)から生まれる。このSAMに対してSAMの外部から遠隔的に影響を与える作用の存在が示唆されつつあるものの、そこに関わる分子機構はほとんど解明されていない。そこで本研究においては、SAMの外部で活性化したシグナルがSAM活性に遠隔的に作用する仕組みに焦点を当て、この仕組みに関与する因子を明らかにすることを通じて、その際に働く分子機構を解明することを目的とした。具体的には、この仕組みに関与することをこれまでに明らかとしてきたERECTA受容体に注目し、本年度は特に、ERECTA受容体に作用するペプチド因子に関しての解析を中心に行った結果、以下のような結果を得た。 1)ERECTA受容体の機能が欠損した場合の表現型に関わるリガンドを探索した結果、EPFL4とEPFL6という二つのペプチドを欠損させた場合にERECTA受容体が欠損した場合の表現型と全く同じ表現型が現れた。 2)ERECTA受容体とEPFL4またはEPFL6が物理的に相互作用した。 3)ERECTA受容体はこの仕組みにおいて篩部で機能することが必要だった。 4)一方で、EPFL4とEPFL6は内皮で発現した。 以上の結果から、内皮から発せられるEPFL4とEPFL6が篩部でERECTA受容体により受容されることが重要であることが明らかとなった。 上記のような、内皮と篩部との間での細胞間コミュニケーションはこれまでに全く報告がなく、学術的に非常に独創的であり、新しい組織間相互作用に関する知見を植物の発生学に導入した極めて意義深い研究であると考えている。
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