本年度ではFtsH、DegブロテアーゼならびにD1リン酸化という三つの因子が光化学系II修復サイクルに与える影響とその関係性を明らかにするために、変異体でのD1タンパク質のリン酸化レベルの評価、ならびに多重変異体の作成/解析を行った。はじめにdeg5 deg8変異体での明所でのD1タンパク質のリン酸化レベルを検討した結果、リン酸化は野生株と同程度であることが明らかとなった。先に得ていたFtsHを欠損したvar2変異体で有意にD1タンパク質のリン酸化レベルが上昇するという結果と合わせて考えると、改めてFtsHによるD1分解とD1タンパク質のリン酸化の間に深い関連性が存在する事が示唆された。次にvar2 stn8二重変異体(FtsH/リン酸化酵素欠損変異体)を用いて、変異体の活性酸素種蓄積量を解析した。その結果、var2変異体に比べてvar2 stn8変異体では活性酸素種がより蓄積しやすいことが認められた。リン酸化されていない傷害を受けたD1タンパク質が多く存在することが活性酸素の発生につながることが示唆された。一方で、FtsHとDegが協調して働く、もしくは個々に機能するのかを検討するためにFtsHとDegを共に欠損した変異体(deg5 deg8 var2三重変異体)の作成を行った。本年度では、var2変異体とdeg5もしくはdeg8変異体をかけ合わせ作成したvar2 deg5、var2 deg8変異体をさらにかけ合わせ、var2 deg5 deg8変異体を得た。またvar2 deg5 deg8変異体はvar2変異体と同程度の斑入りを示し、斑の形成にDegプロテアーゼの欠損は特に影響しないことが明らかとなった。今後、この変異体を用いて光ストレスに対する応答性ならびにD1タンパク質分解について評価する。
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