研究概要 |
植物細胞は移動することができないため、細胞の分裂・伸長・分化の方向や極性が厳密に制御されることで、葉や根などの器官が形成される。本研究では、シロイヌナズナのNIMA関連キナーゼ(NEK)がどのように細胞分裂と細胞伸長の極性を制御するのかを解析した。シロイヌナズナNEK6は細胞伸長において中心的な機能を果たしており、微小管上でダイナミックな挙動を示した。NEK6は他のNEKメンバーであるNEK4, NEK5と相互作用し、チューブリンをリン酸化することで、微小管を不安定化し、細胞の伸長方向を調節することがわかった。更に、シロイヌナズナのNEKファミリー(NEK1-NEK7)は分裂組織や維管束で発現しており、細胞分裂パターンを制御することを見いだした。次に、連続的で方向性のある木部分化に必要な糖タンパク質xylogenの輸送機構・作用機構を解析した。Xylogenは方向性を持って分泌され、隣接した細胞の分化を促進するが、この極性分泌にはGPIアンカーと呼ばれる糖脂質修飾が必要であること、小胞輸送により制御されることを示した。Xylogenに類似したタンパク質をコードする遺伝子は、様々な植物のゲノムに存在しており、xylogenファミリーを形成していた。更に、シロイヌナズナのxylogenファミリーは維管束だけでなく、分裂組織や皮層、花粉などで発現しており、多様な機能を持つことが示唆された。また、GPI生合成変異体の解析から、Xylogenファミリーを含むGPIアンカー型タンパク質は、植物の成長と細胞壁形成に必須であることがわかった。本研究により、植物のNEKファミリーが微小管機能を介して細胞分裂と細胞伸長の両方を制御すること、xylogenの輸送過程とxylogenファミリーの発現パターンが初めて明らかになった。
|