研究概要 |
葉緑体は、機能・分化の状態に応じて核や他のオルガネラへと情報を発信する。しかし葉緑体からどのような因子を介して他のオルガネラへと情報が伝達されているかについては未解明な部分が多い。本研究では、葉緑体からの情報伝達に関与する因子の1つとして「光合成活性に依存して上昇するサイトソルのカルシウムイオン(Ca^<2+>)」を候補にあげ解析を行っている。当該年度は以下を行った。1)Ca^<2+>結合性発光タンパク質・エクオリン遺伝子を導入したシロイヌナズナ葉において赤色光(λ_<max>=650nm)によるサイトソルのCa^<2+>濃度変化を測定する実験系を確立した。野生型シロイヌナズナにおいて、赤色光(100-600μmol m^<-2>s^<-1>)によりサイトソルCa^<2+>濃度が上昇することを明らかにした。2)赤色光によるCa^<2+>上昇に対する葉緑体の関与を調べるために、斑入り突然変異体var2(葉緑体が発達した細胞と未発達な細胞を持つ)にエクオリン遺伝子を導入し、エクオリン発光の強いラインを単離した(var2突然変異体は岡山大学・坂本亘教授より分譲していただいた)。3)葉緑体からの情報伝達因子として予想される活性酸素やMg-protoporphyrin IXがCa^<2+>上昇に関わるかを調べるために、これらの因子の代謝・産生異常突然変異体(flu,gun)にエクオリン遺伝子を導入した(flu突然変異体はNottingham Arabidopsis Stock Centreから購入し、gun突然変異体は京都大学・望月伸悦博士から分譲していただいた)。今後は2)、3)で得られたエクオリン導入突然変異体を用いて赤色光によるCa^<2+>変化を測定し、Ca^<2+>上昇に必要な因子とCa^<2+>の役割について調べる予定である。
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