オートファジーは、オルガネラを含む細胞内タンパク質を液胞に送り込み、分解する現象であり、液胞分解機構の中心的な役割を担っている。申請者は、オートファジー不能植物(ATG遺伝子破壊株)の表現型解析から、高等植物のオートファジーにはタンパク質のリサイクリング・アミノ酸の供給源としての役割に加え、サリチル酸シグナリングの抑制に重要な働きがあることを明らかにしたが、どのようなメカニズムで抑制しているのかについては未だ謎である。 最近になって、オートファジー能を欠損した植物ではペルオキシソームが非常に多く蓄積することを見出した。今年度は、電子顕微鏡による微細構造の観察を行い、オートファジー不能植物において蓄積したペルオキシソームには電子密度の高い領域が存在し、そこにはカタラーゼが蓄積していることを発見した。したがって、オートファジーがペルオキシソームの品質管理を行うことで老化あるいは病原菌感染時にサリチル酸シグナリングを抑制しているのではないかという仮説を立て、現在、それを検証中である。これまでに、ペルオキシソームの細胞内のレドックス状態を可視化する系を確立し、野生型植物のペルオキシソームの内部は通常還元状態であることを示すことに成功している。また、GFP融合ユビキチン様オートファジー蛋白質ATG8を発現させたトランスジェニック植物を用いてGFP抗体で共免疫沈降するタンパク質の単離を試みた。現在、LC/MS解析によりそれらタンパク質の同定を行っている。
|