研究概要 |
植物細胞は通常成長の過程で数倍から数十倍にまで拡大するが、葉や花の分泌細胞などの特殊な細胞の中には数百倍から数千倍にまで達するものもある。植物細胞の伸長生長がどのようにして終了し、細胞の最終的な大きさがいかに決定されるかという課題は、基礎・応用研究の両面において重要であるが、これらの過程を司る分子機構の全貌は未だ解明されていない。本研究では我々が最近同定した細胞伸長抑制因子GT2-LIKE 1(GTL1)の機能解析を通して、高等植物における細胞サイズの分子制御ネットワークを明らかにすることを目的としている。GTL1はもともとトライコームと呼ばれる葉の毛細胞のサイズを制御する因子として単離されたが、トライコーム以外の細胞でも細胞生長が終了する時期に発現しているため、これらの細胞においてもトライコームと同様の機能をもつことが予測されていた。今年度はこの可能性を検証するために、細胞もしくは器官特異的に遺伝子発現を誘導することが知られるプロモーターにGTL1:GFPを連結したコンストラクトを作成し、形質転換体を作成した。これまでのところ、GL2プロモーター(根毛非形成細胞およびトライコーム特異的)、EXP7プロモーター(根毛非形成細胞特異的)、ATML1プロモーター(茎頂メリステムのL1層特異的)を用いてGTL1:GFPを細胞特異的に発現させることに成功し、これらの形質転換体ではGTL1:GFPが発現している細胞特異的に生長が抑制されることを見出した。またトライコーム以外の細胞ではGTL1のホモログであるDF1,GT2が冗長的に機能する可能性が高いため、gtl1,df1,gt2の多重変異体の作成を進めた。
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