研究課題/領域番号 |
22770052
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
安田 美智子 独立行政法人理化学研究所, 植物微生物共生機能研究チーム, 研究員 (30425649)
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キーワード | 植物 / 病害抵抗性 / カルシウムシグナル / 全身獲得抵抗性 / Arabidopsis thariana / カルモジュリン / アブシジン酸 / SAR誘導剤 |
研究概要 |
植物の全身獲得抵抗性(systemic acquired resistance,SAR)は病原体に対する植物独自の自己防御機構である。申請者はSAR誘導がアブシジン酸を介する環境ストレス応答により抑制されることを明らかにした。そこで本研究では、SAR誘導と環境ストレス応答のクロストークに機能する因子を見出すことを目的とした。マイクロアレイ解析の結果から、細胞内カルシウムシグナル伝達に機能するカルモジュリン(CaM)およびCaM様タンパク質(CML)のうち、SAR誘導性で、かつ、アブシジン酸シグナル感受性のCaM/CMLを見出した。昨年度はCAM/CML遺伝子の発現解析を中心に研究を進めて来たが、本年度は、昨年度から準備してきたCaM/CML遺伝子欠損株におけるSAR誘導剤の病害抵抗性誘導効果を検証した。その結果、CaM/CML遺伝子を単独で欠損させた株では、野生株に比べてわずかにSAR誘導能が劣る株もあったが、全体的にSAR誘導におよぼす遺伝子欠損の影響が少ないことを明らかにした。現在、CAM/CML多重変異株を作製しており、複数のCaM/CML遺伝子がSAR誘導に関与している可能性について検証する予定である。また、本年度ではCaM/CML遺伝子過剰発現株(T2)の解析を進め、これら過剰発現株ではSARマーカー遺伝子の発現誘導が促進され、さらに病害抵抗性も増強されていることが示された。この結果から、本研究で解析しているCaM/CMLはSAR誘導シグナル伝達を正に制御していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
22年度に取りよせた遺伝子欠損変異株のT-DNA挿入位置が情報と異なっており、変異体の選抜に時間を要してしまったが、本年度はこれら変異株における生理学的な解析も行なうことができた。また、多重欠損変異株も最終確認の段階まで来ている。過剰発現株も一部を残して完成しており、遺伝子発現レベルの解析、および病害抵抗性試験等を進めている。酵母Two-Hybrid法の準備も整った。植物研究に必須の遺伝子組換えをした実験材料がおおむね作製出来たので、来年度はこれらを用いて成果をまとめていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、これまでに準備してきた遺伝子組換え植物等を利用して、SARシグナル伝達経路におけるCAM/CMLの機能をより明確にしていく。具体的にはCaM/CMLの細胞内標的因子を酵母Two-hybrid法により探索し、アブシジン酸シグナルの活性化で遺伝子発現が抑制されるCaM/CMLがどのような因子に影響をあたえているのかを明らかにしていく。また、CaM/CML遺伝子発現誘導のシグナル伝達経路を明らかにするために、サリチル酸生合成欠損株sid2やeds5等にSAR誘導剤を処理し、CaM/CML遺伝子の発現を解析する予定である。これらの成果を24年度にまとめて論文を出す。
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