動物組織において、我々はAtg5やAtg7に依存しない新たなメカニズムによって実行されるオルタナティブ・オートファジーを発見した。本研究では、この新規オートファジーの(1)簡便な指標タンパクを同定、(2)オルタナティブ・オートファジーの機能部位を同定し微細構造解析を行うこと、(3)オルタナティブ・オートファジー特異的遺伝子欠損マウスを用いた機能解析を行うことを目的とした。 (1)我々のグループでは新規オートファジーにおいて特異的に働くタンパク質を複数個同定しており、現在、これらの分子の中からマーカータンパク質を選定するため、蛍光タンパク質を融合させ、細胞内、組織内、マウスへ導入している。 (2)候補のマーカー遺伝子を導入した細胞、組織、マウスを用いて、様々な誘導刺激により亢進したオートファジーを蛍光で捉え、特異性を検討している。 (3)オルタナティブ・オートファジー関連分子の遺伝子欠損マウスをこれまでに3系統作製した。これらのうち一系統は胎生致死、他の二系統においては(1)オルタナティブ・オートファジーが観察されず、それによる(2)異常なミトコンドリアの蓄積と(3)大量のフェリチンの蓄積が観察された。さらに(4)赤血球の分化異常や、(5)マクロファージによる赤血球の貪食像が認められた。これらの表現型は、ヒトの血球貪食症候群(高フェリチン血症を伴い、マクロファージによって血球が貪食される疾患)に酷似している。これらの事実から、オルタナティブ・オートファジーは赤血球最終分化におけるミトコンドリア除去に重要な役割を果たしており、その機能破綻は血球貪食症候群の発症原因となりうるものと考えられた。
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