研究課題/領域番号 |
22770059
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
山本 真紀 専修大学, 商学部, 准教授 (80361616)
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キーワード | 藻類 / トレボキシア藻 / 細胞分裂 / 細胞壁 / 電子顕微鏡 |
研究概要 |
トレボキシア藻綱のStichococcus bacillarisには一時的に糸状体を形成する株がある。本種が含まれるカワノリ科では、細胞塊を形成するDiplosphaeraや柔組織のような塊になるPrasiolopsis、葉状体を形成するPrasiolaが存在することから、Stichococcusの糸状体形成は多細胞化の初期の段階と位置づけられる可能性がある。 昨年度は、S.bacillarisやDiplosphaera chodattiの分裂溝とトライアンギュラースペースに生じる基質小胞と細胞外分泌物の消長を透過電顕で調べた。今年度はS.bacillarisの糸状体形成株と非形成株の差異に着目した。S.bacillaxis Handa-1755-a株は、対数増殖期から定常期を通じて細胞は単細胞状態のままだった。 一方、786-x株は対数増殖期に数~数十個の娘細胞同士が連なった糸状体を形成するが、定常期には娘細胞が分離し単細胞状態に戻る。このことから786-x株の糸状体形成は娘細胞解離の遅れに起因すると予想された。 そこで、1755-a株と786-x株の分裂を透過型電顕で観察したところ、細胞質分裂と母細胞壁の開裂はどちらの株でも同じように起こっていた。娘細胞解離の遅れは母細胞壁開裂後に娘細胞壁の接着面が分離する過程に原因があるのではないかと考えられた。マンノース特異的ConA染色を試みたところ、786-x株の糸状体の両末端と、接着したままになっている娘細胞同士の境目で特異的な蛍光が観察された。同じマンノース特異的PSA染色では、糸状体の片方の末端のみに蛍光が観察された。一方、糸状体を形成しない1755-a株では、これらのレクチン染色の蛍光は観察されなかった。昨年度と今年度の成果をもとに、来年度は新規分裂面での細胞壁成分の違いが娘細胞の解離の遅れへ及ぼす影響について調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
母細胞壁の開裂とそれに続く娘細胞解離の過程を超微細構造学的に解析することにより、カワノリ科の多様な細胞体制の発達の初期段階としての糸状体形成機構が見いだされつつある。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に基づき、Diplosphaeara属やPrasiolopsis属の種を研究対象に含め、新規分裂面の細胞壁成分の差異を明らかにすることにより、カワノリ科の細胞体制の発達過程の一端を明らかにすることを目指す。
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