シロイヌナズナでは暗黒下でも光形態形成する変異体として単離されたcop変異体の多くが、光照射下では矮化し、頂芽優勢を喪失する。従って、これらのCOP因子は芽生えの光形態形成だけでなく、発生後期の生長制御にも大きく関わっていると推測される。しかし、cop変異体の完全欠損アリルは芽生えの段階で生育を停止する致死形質を示すことが多いことから発生後期に現れる現象の解析に用いる事は難しく、COP9シグナロソームをはじめとして、精力的に進められている芽生え期のCOP因子の生化学的・分子生物学的な解析に比べ、芽生え以降の発生におけるCOP因子の役割についてはあまり研究が成されていない。そこで、植物の発生後期におけるCOP因子の役割を解明することで、光シグナルによる植物の個体サイズの制御カスケードを明らかにできると考え、E3リガーゼとしてプロテアソームによる特異的なタンパク質の分解に関与するCOP1の弱い変異アリルから、矮化を弱めるサプレッサー変異体を単離した。 cop1-6変異体の種子にEMSによる変異原処理を行い、M2およびM3世代にて主茎の長さを指標に約30系統の矮化サプレッサー変異体を選抜した。次世代で形質の再現性を確認し、稔性が高い系統の中から独立した変異由来と推測される3系統を選び、以降の解析を行うことにした。これらのサプレッサー変異体はcop1変異体の光照射下での特徴である、ロゼット葉が小さく葉柄が短い、アントシアニンが蓄積するなどの形質を維持している一方で、頂芽優勢の復帰、花成の遅延など、系統ごとに特徴ある表現型を示した。これは、COP1がE3リガーゼとして多くの標的タンパク質を持ち、多面的な役割を持っていることと一致する。次年度はこれらのサプレッサー変異体の原因遺伝子の単離を行い、光シグナルカスケードにおけるCOP1との関係を探る。
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