研究概要 |
シロイヌナズナの暗黒下でも光形態形成する変異体cop1は、光照射下では矮性形質を示し、頂芽優勢を喪失する。本研究は、cop1変異体の矮化機構を解析することで、光シグナルによる植物の個体サイズの制御機構を明らかにすることを目的とする。 今年度はこれまでに単離したcop1変異体の矮化を抑制するサプレッサー変異体のうち、花茎がcop1変異体の2倍以上に伸長する3系統(emc1,emc2,emc3)について解析を進めた。遺伝解析の結果、emc1,2,3変異体はそれぞれ1遺伝子座由来の劣性変異であることがわかった。暗所での光形態形成や明所でのアントシアニンの蓄積、葉が小さくなるといったcop1変異によって引き起こされる表現型を維持していることから、これらの表現型に関わる遺伝的経路とは独立した経路がemc変異による矮化抑制に働いている可能性が示唆された。 cop1変異体の花茎細胞を走査型電顕を用いて観察したところ、cop1の花茎は野生型(Co1)に比べ細胞の縦方向(長軸側)が短いことがわかった。cop1変異体の花茎は10個程度の花をつけると小さな花様器官または頂端花を形成して生育を停止することから、COP1は細胞の伸長と茎頂分裂組織の分裂能の維持の両方に働いていると推測された。emc1,2,3変異体の花茎細胞は、縦方向の長さがcop1とほとんど変わらなかったことから、これらのemc変異はcop1変異による茎頂分裂組織の細胞分裂の停止を抑制することで花茎を伸長させることがわかった。 染色体マッピングによりemc1変異を含むゲノム領域を第1染色体上腕部の約2.1Mbの領域に狭めた。今後はホールゲノムシークエンスを行い、変異部位を同定する。
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