研究課題
多くの昆虫は天空の偏光パターンから自らの向いている方角を検出し、それをナビゲーションに利用する。本研究では、昆虫の偏光に対する行動および脳内の偏光感受性ニューロンの活動を長時間記録することにより、これらのニューロンが時刻(太陽高度)によって変化する天空の偏光パターンをどのように時間補償しているのかを解明することを目的としている。これまでの研究により、フライトシミュレータ内に拘束したミツバチが、飛翔する際に上方からの偏光刺激に応答して飛行方向を変化させることが確認された。そこで本年度は、同様なフライトシミュレータを用いて拘束ミツバチの飛翔軌跡の詳細な観察を行い、上方からのe-ベクトル方向の変化との相関を調べた。その結果、ゆっくりと回転するe-ベクトルの偏光刺激を上部から与えると、ミツバチは回転に追随して左右へのターンを繰り返すことが明らかとなった。このことは、飛行中のミツバチが天空の偏光パターンを利用して「偏光定位」によって自らの飛行方向を調節することを示唆している。今後は、定位するe-ベクトル方向と採餌経験との関連やその時間変化についてさらに解析する予定である。また、偏光視システムの時間補償の実態を調べるため、偏光視の一次中枢である視葉の一部の視髄に存在する偏光感受性ニューロン(POLニューロン)からの長時間記録を試みた。吸引電極による多ユニット記録から偏光刺激に対する応答を解析することにより、POLニューロンの記録ユニットを単離した。これらのユニットの応答を長時間記録したところ、主観的時刻によりe-ベクトル変化に対して応答の振幅が変化することが明らかとなった。このことは偏光視システムが体内時計の制御下にあり、偏光を利用したナビゲーション行動の時間補償に寄与することを示唆している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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