成体視細胞における翻訳後修飾SUMO化の作用機序を調べるため、SUMO E2リガーゼをコードするUbc9のfloxマウスを作製した。このマウスに視細胞特異的遺伝子Crxのプロモータ制御下でタモキシフェン誘導型Creを発現するトランスジェニックマウスを掛け合わせたマウスを作製した視細胞の分化および成熟が完了している2週齢以降(P21およびP30)でタモキシフェンを投与し、1ヶ月後に網膜の形態を野生型と比較した。外節の光受容蛋白質(杆体および錐体オプシン)、シナプス形成因子など視細胞の分子マーカーの発現パターンを比較した結果、外節の長さや核の位置やシナプスの形態などにおいて特筆する変化は観察されなかった。また、双極細胞の視細胞への投射にも大きな変化は観察されなかった。この結果より成体視細胞の形態維持において、SUMO化は関与しない可能性が示された。また、視細胞の分化決定期におけるSUMO化カスケードの欠損はSオプシンの異所的な発現を引き起こしたが、P21以降にSUMO化を欠損させた視細胞ではこの現象は認められなかった。この結果は、分化後(P21)の視細胞においてサブタイプ特異的な遺伝子発現を維持するために、別の機構(例:メチル化による遺伝子発現の抑制など)が関与する可能性を示している。 今後、網膜電図を測定し、視細胞の光情報伝達能にSUMO化が関与するか検証する。さらに、視細胞サブタイプの分化直後(P7~P9)にタモキシフェンの投与し、視細胞の初期の形態形成においてSUMO化が関与しているか検証していく。
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