研究概要 |
SUMO化は標的蛋白質にユビキチン様分子であるSUMOを付加する翻訳後修飾であり、様々な分子がSUMO化によりその活性が制御される事が報告されている。マウス網膜は杆体視細胞と異なる波長感受性を持つ2種類の錐体視細胞を持ちこの分化決定においてSUMO化が重要であることを報告したが、成体視細胞におけるSUMO化の関与は不明である。そこで、視細胞の光情報伝達カスケードおよび形態の維持におけるSUMO化の役割をコンディショナルノックアウトマウスを用いて解析した。SUMO E2リガーゼをコードするUbc9のfloxマウスに、視細胞特異的遺伝子Crxプロモータ下でタモキシフェン誘導型Creを発現するマウスと掛け合わせ、視細胞の成熟が完了した3週齢以降でタモキシフェンを投与し、視細胞の発達後にSUMO化カスケードを欠損するマウスを作製した。 光情報伝達能の解析はタモキシフェン誘導後1ヶ月後のマウスを用いて網膜電図を記録した。暗順応下(杆体視細胞由来)および明順応下(錐体視細胞由来)の網膜電図を記録した結果、視細胞由来の応答であるa波および脱分極型双極細胞由来の応答であるb波の応答はUbc9欠損マウスにおいて野生型と同等であった。 次に、タモキシフェン投与後6ヶ月後の網膜を視細胞特異的マーカー(ロドプシンなど)で組織染色を行い視細胞の形態を比較した結果、野生型と同様であることが分かった。 更に、視細胞で発現し、SUMO化による制御が報告されている分子(mGluR8,Caskなど)のSUMO化のリジン残基の変異体を電気穿孔法で導入したが、変異蛋白質の局在や視細胞の形態に明確な差は認められなかった。これらの結果より、視細胞においてSUMO化は分化決定に関与し、光情報伝達や維持には関与が少ない事が示唆された。
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