研究課題
申請者の研究によって、雑種不妊と求愛行動の分化の原因遺伝子座が、性染色体に局在することが明らかとなっていた。そこで、これら以外の種間差のQTL解析を行った結果、多くの種間差が、ネオX染色体と祖先X染色体にマッピングされた。ネオX染色体上のQTLは、雌雄双方において効果を持つのに対して、祖先X染色体上のQTLは一方の性のみでしか効果を持たないことが明らかになった。また、雑種行動異常の原因遺伝子は祖先X染色体に見つかった。これらの成果は、ネオX染色体と祖先X染色体の間に機能的な違いがあることを示しており、性染色体と種分化の関係を論じる上で重要な成果になると期待される。また、日本海型イトヨのメス1個体について、全ゲノムを解読した。ネオX染色体と祖先X染色体の双方において、常染色体よりもヘテロ接合度の低下がみられた。一方、アラスカ湖産のイトヨの配列と比較したところ、19番(祖先X染色体)は明らかに常染色体よりも遺伝的分化が少なかったが、ネオX染色体ではまだその傾向が現れていなかった。このように、ネオX染色体には、常染色体とは異なる特徴が現れつつあるものの、まだ、祖先X染色体ほどの分化が進んでいないことが明らかになった。これは、性染色体の進化を理解する上で極めて貴重な知見である。また、魚類における性染色体転座の文献例を集めて頻度やパターンを解析した。この研究成果は、性染色体の転座が魚類で頻繁に生じることを示しており、申請者らの研究成果が普遍性を持つ可能性を強く示唆したものである。
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Journal of Evolutionary Biology
巻: 23 ページ: 1436-1446
Current Biology
巻: 20 ページ: 2124-2130
http://www.lifesci.tohoku.ac.jp/topics/topics_1011.html