研究概要 |
約10万年周期の氷河期サイクルを通して日本列島では比較的に温暖湿潤な状態が維持されており、温帯域の淡水生物の氷期の退避地として多様な遺伝系統を維持してきた可能性がある。本研究課題はこの仮説を検証するために日本の淡水湖沼に頻繁に出現する動物プランクトン(枝角類)のBosminopsis,Bosmina,Diaphanosoma,Ceriodaphniaの4属で種系統の多様性と種内の個体群構造を網羅的に解析する。22年度では次の3項目を実施する計画であった。(1)日本全国での枝角類の採集、(2)ミトコンドリア遺伝子のプライマーを用いた種系統の解析、(3)種内の個体群構造を明らかにするために適切なミトコンドリア領域を増幅するためのプライマーの設計。(1)のために日本全国170カ所の湖沼で動物プランクトンの採集を行った。そのうち18カ所からBosminopsis、116カ所からBosmina、35カ所からCeriodaphnia、65カ所からDiaphanosomaを得られた。広範に分布する多数の湖沼から枝角類のサンプルが得られたことで、今後日本の枝角類の多様性を充分に評価できる試料として利用できる。(2)のためにミトコンドリア16SrRNA遺伝子領域を増幅して、採集で得られた4属の種系統を解析した。Bosminopsisから2系統、Bosminaからは4系統、Diaphanosomaから4系統、Ceriodaphniaからは8系統がいることが分かった。これまでのBosminopsis,Diaphanosoma,Ceriodaphniaでは日本で記載されている種数がそれぞれ1,2,6種であり、今回得られた種系統よりも少ない。これらの3属に未記載種がいる可能性が示された。
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