研究概要 |
オウム類において堅果食適応を促進したと考えられる特異な顎筋群の創出機構を探るため、オカメインコ胚から新たに複数の骨格筋関連遺伝子(MyoD,Myongenin,Myostatin)と筋結合組織関連遺伝子(Six2,Tenomodulin,Tenascin-C),さらには代表的なシグナル経路を構成する複数の遺伝子を単離し、in situハイブリダイゼーション法によりウズラ胚における相同遺伝子の発現パターンと比較を行った。その結果、オカメインコ胚の頭部において、一部の遺伝子の特異な発現パターンが観察された。今後はこれらの遺伝子の新奇な筋形成において果たす役割を調べるために、ニワトリ胚での強制発現系を用いた解析を進めていく予定である。 また、オカメインコとウズラの胚(ステージ28、30、32、34、36、38)の連続組織切片に対してアセチル化チューブリン抗体の免疫染色を行うことにより神経細胞を特異的に標識したのち、切片の三次元立体構築を行い、2種の鳥類の各発生ステージにおいて顎筋、その支配神経、周辺の硬組織がどのようなパターンで形成されてくるのかを詳細に比較した。すでに母体となる筋集合からの分離が進んでいる筋の内部には運動神経の軸索が分布していたが、分離開始直後の筋内部には分布していなかった。この比較形態学的解析により、複数の組織系からなる複合体である脊椎動物の摂食器官がどのような機序で形づくられ、多様化していくのかについての知見を得ることができた。
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