本研究の目的は、レトロポゾンの挿入パターンを指標として鳥類の目レベルの系統関係、特に1)スズメ目の系統的位置、2)ツル目の単系統性/多系統性と各科の系統的位置、3)猛禽類の系統的起源を明らかにすることである。本年度は特にツル目と猛禽類に着目し、CR1と呼ばれるLINEの挿入の有無を指標として系統解析をおこなった。ツル目からはタンチョウ、ヒメクイナ、カグーのゲノムライブラリをスクリーニングすることにより総計300のCR1挿入遺伝子座を得た。この解析の結果、ツル目内部のいくつかのグループの単系統性を示す遺伝子座を複数得ることに成功した。しかしツル目全体が単系統か否かを明らかにするには至っておらず、来年度の課題として残されている。猛禽類に関してはコンドルBAC配列が既に報告されており、それらを検索した結果、数十遺伝子座のCR1配列を得た。この場合、CR1周辺配列の情報が比較的多く得られるため、ニワトリおよびゼブラフィンチのゲノムデータベースと照らし合わせることにより、他の種におけるオーソログの単離を効率よくおこなうことができた。それらを解析した結果、猛禽類が多起源であることを示す極めて興味深い遺伝子座を発見することができた。一方、スズメ目(ゼブラフィンチ)に関してはゲノムデータから多数のCR1配列を得る段階まで終えている。来年度はこれまでに得られた膨大なCR1配列の解析を効率良く進め、鳥類全体の進化史を議論するための系統樹の再構築をおこないたいと考えている。
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