研究課題
平成23年度は、レトロポゾンの挿入パターンを指標として鳥類の目レベルの系統関係、特にツル目の単系統性/多系統性と各科の系統的位置、および猛禽類の系統的起源の解明を目的として研究を進めてきた。ツル目に関しては、タンチョウ、ヒメクイナ、カグーのゲノムライブラリのスクリーニングにより得られた約300のCR1挿入遺伝子座に関して、CRIの上流・下流に設計したプライマーを利用したFlanking PCRをおこない、相同遺伝子座における種間でのCR1の有無に関して比較解析をおこなった。その結果、ツル目コアグループと名付けられたツル科、ツルモドキ科、ヒレアシ科、ラッパチョウ科、クイナ科の単系統性を示すCR1の挿入を5遺伝子座、またツル科とツルモドキ科の単系統性を示す遺伝子座を1つ発見した。さらに主要な鳥類を含む新顎上目の単系統性を示すCR1挿入遺伝子座も3つ得られた。また猛禽類の系統的起源に関しては、コンドルのBAC配列データから得られた181遺伝子座のCR1のうち数十遺伝子座に関してFlanking PCRをおこなった。その結果、コンドル、ツル、カイツフリ、シギ、フラミンゴにCR1が挿入され、タカ、ハヤブサ、フクロウに挿入されていない遺伝子座が1つ発見された。この結果は猛禽類の起源が多系統であることを示す結果である。さらにコンドル、ツル、ペンギン、コウノトリ、タカ、ハヤブサ、ゼブラフィンチの単系統性を示す遺伝子座も発見された。両者のCR1挿入パターンは一見矛盾するように見えるが、この結果は新顎上目の祖先から短期間に複数の種分化が起こったことを意味している。今後これらの結果をまとめ、論文として発表したいと考えている。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
DNA Research
巻: 19 ページ: 91-102
10.1093/dnares/dsr044
PLoS One
巻: 6 ページ: e28497
10.1371/journal.pone.0028497
PLoS Genetics
巻: 7 ページ: e1002203
10.1371/journal.pgen.1002203
Molecular Biology and Evolution
巻: 28 ページ: 1769-1776
10.1093/molbev/msq344