陸上植物は約4.8億年前に水中生活をする藻類から進化した。これまでの形態学的研究と分子系統学的研究の結果から、藻類の中でシャジクモ藻類が陸上植物に最も近縁だと考えられている。陸上植物は1倍体、2倍体両世代で多細胞体制を作る。一方、シャジクモ藻類は1倍体で多細胞体制を作るが2倍体は単細胞である。本研究では、陸上植物の2倍体多細胞体制進化を解明するため、陸上植物の姉妹群候補の一つであり、1倍体世代だけが多細胞体制を作るシャジクモ(Chara braunii)の全生活環を網羅した、トランスクリプトーム解析を進めた。本年度は「生命科学系3分野支援活動」(ゲノム研究分野)の協力を得て、次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析を実施し、シャジクモの生活環5ステージ(栄養成長期、生殖器官形成直前期、生殖器官成熟前期、生殖器官成熟後期、リゾイド)の配列を決定した。本解析で得られたシャジクモのショートリード配列のde novoアセンブリを実施した結果、アセンブリ条件を検討することによって信頼性の高い多くのコンティグを得ることができ、これらのコンティグの中から、陸上植物の発生に重要な遺伝子や陸上植物特異的と考えられている遺伝子と高い相同性を示す配列を多く見いだすことができた。さらに本研究で見いだした個々の候補遺伝子配列の系統解析および発現解析を進めている。今後、これらの候補遺伝子の進化を解明することにより、2倍体多細胞体制獲得の鍵が何であったかを解明できると期待される。
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