研究課題/領域番号 |
22770085
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
丸山 宗利 九州大学, 総合研究博物館, 助教 (80512186)
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キーワード | 好蟻性 / ヒメサスライアリ / マレーシア / ペルー / 分類学 / 分子系統学 / 適応放散 / 多様化 |
研究概要 |
2011年度はマレーシア(マレー半島・ボルネオ)、南米のペルー、タイにおいて野外調査を実施した。これらの調査により、主な研究材料となるマレーシア産の標本は充分に集めることができ、今後の分類学的研究、分子系統学的研究に活用する見込みであるごさらに、補助的な研究材料となる南米産のグンタイアリ類と共生する種の標本も主要なものを手にすることができた。これらの材料は、軍隊アリと共生するハネカクシの形態進化の考察、収斂進化の可能性について議論するうえで欠かせないものであり、画期的な研究成果に結び付くことが期待される。また、得られた新鮮な標本に基づく分類学的研究、DNAシーケンス情報の蓄積も準めている。分類学的研究では、ボルネオ・(マレーシア・サラワク州)のランビル国立公園に生息し、ツヤヒメサスライアリAenictus laeviceps種複合群と共生するハネカクシをまとめ、複数の新種や新属を記載するとともに、寄主特異性の強さや生物地理学的な考察を行った。この研究により、同所的に生息している多数のヒメサスライアリの種ごどにハネカクシが種分化している可能性が示唆され、隠れた生物多様性の存在が浮かび上がった。また、分子系統学的な研究として、、ミトコンドリアDNAの塩基配列をもとに、ヒメサスライアリヤドリ族の系統解析を行い、適応放散の可能性について言及する内容を日本昆虫学会で口頭発表した。好蟻性昆虫としてきわめて顕著な形態を持ち、さまざまな形で寄主アリとの関わりをもつハネカクシが、実際にどのような進化プロセスを経て多様化しているのかを考察する重要な足がかりとなる研究といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は計画通り順調に進んでいるが、調査の過程で数多くの新種が見つかり、さらなる調査の必要性が出てきた。充分な標本を得るには、まだ時間がかかりそうである。
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今後の研究の推進方策 |
調査の過程で数多くの新種が見つかったため、それらの記載分類を進める必要がある。また、正確な系統関係の推定にあたり、より充実したDNAシーケンスデータの蓄積が必要であり、実験作業をさらに進める必要がある。今後はさらなる野外調査の推進と、成果公表に向けた分子実験を行う予定である。
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