研究概要 |
研究代表者らの先行研究において近縁別種であることが示されたChlamydomonas reinhardtriとChlamydomonas globosaについて,温度条件に応じた増殖特性の変化を探索した。その結果,25℃での培養条件で増殖に若干の差が認められた。しかしながら見出された差が僅かであったため,これらの藻類は本研究で探索する生理学的な分化の検討には必ずしも適当ではないと考えられた。 そこで,さらに研究対象をChlamydomonasの属するオオヒゲマワリ目に拡大し,いくつかの株群について分類学的調査を行った。この内,Gungnir属のG.neglectumと近縁株群については,互いに近縁な3種が含まれることが示唆された(日本藻類学会第35回大会発表)。またChlamydomonas parallelistriataと近縁株群においては,細胞サイズが大きく異なる1種を含む3種が含まれることが示唆され,予備的なDNA量の推定に基づき,倍数体化が起こっている可能性が示唆された。さらにChlamydomonas planoconvexa(後に学名はC.neoplanoconvexaに改訂された)の新規株が,オオヒゲマワリ目の中でこれまで知られていなかった新規の系統群を代表することが示された(日本植物分類学会第10回大会発表)。本種(光合成性の緑色藻類)は新規系統群の代表種として注目されるのみならず,無色の未発表藻類株と近縁であることから,近縁種間で光合成能の喪失が起こった系統として特に注目される。この他,日本新産藻類の報告と(Journal of Japanese Botany誌論文発表),関連研究の概要について学会などでの発表を行った(日本植物学会第74回大会発表,第8回クラミドモナスワークショップ発表)。
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