研究概要 |
分子生物学的手法を用いて,性別不明の哺乳類剥製標本や骨格標本の性判定を行うことを目的とする.本年度はY染色体特有のSRY遺伝子及びX・Y染色体の両者に存在するAMEL遺伝子を可能な限り多くの分類群について解析した. SRY遺伝子については,哺乳綱全29目のうち13目21科33種の塩基配列を決定することができた.SRY遺伝子のうち約200bpの領域では塩基配列の保存性が高く,33種の変異率は0.191%であった.また,複数種を解析した分類群について相同の領域について見ると,偶蹄目(1科2種)では0.000%,食肉目(3科6種)では0.036%,食虫目(1科2種)では0.006%,兎形目(1科3種)では0.029%,霊長目(1科2種)では0.000%,齧歯目(4科10種)では0.156%であった.骨格標本や剥製標本から抽出したDNAは,申請者の経験から平均100bp~200bpの断片に分解されていると考えられる.従って,そのようなDNAを対象に塩基配列を決定しようとする場合,ターゲット領域は200bp未満としなければならない.多くの分類群について,SRY遺伝子の中に保存性の高い約200bpの領域が存在していたことは,今後(最終年)のターゲット領域の選定及びその領域の増幅に用いるプライマーの作成につながるポジティブな結果であったと言える. 一方,AMEL遺伝子については,5目9科12種の解析を終え,その変異率は0.083%であった.しかし,種数が不十分であったため,詳細な解析は行えなかった.AMEL遺伝子を増幅するためのプライマーは先攻研究に準じたが,プライマーが合わない種が多かったことが,解析が遅れた要因である.今後,さらに解析を進める必要がある.
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