研究課題/領域番号 |
22770089
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
栗岩 薫 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 特定非常勤研究員 (50470026)
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キーワード | 小笠原 / 豆南諸島 / 海産魚類 / アカハタ / 聟島 / 父島 / 母島 |
研究概要 |
世界的に見ても特筆するほどの多様性に富む日本沿岸の魚類相、その成り立ちを明らかにするには、生息する魚類の時空間分布に対し統合的なアプローチをする生物地理学的研究が有効である。しかし、山脈や水系などにより閉鎖的環境にあるため研究例の豊富な淡水魚に対し、物理的障害がなく開放的環境にある沿岸性海産魚については報告がほとんどない。本研究では、日本の魚類相を考える上で最も興味深い海域の一つである伊豆-小笠原諸島について、ハタ科アカハタを用いた分子系統学的および集団遺伝学的解析、さらに沿岸性魚類全般の採集とリスト化による魚類相の比較解析といったアプローチにより、同海域の自然史を明らかにしようと試みた。 23年度は、小笠原諸島における採集調査を行った。小笠原諸島(群島)は三つの島峨群に分けられる。すべて無人島の聟島列島、二つの有人島の一つ父島を含む父島列島、もう一つの有人島である母島を含む母島列島である。採集調査はこれら三つの島嶼群全域にわたる64地点で行った。採集した魚類はすべて国立科学博物館・魚類学術標本ナショナルコレクションに標本として登録する予定だが、当館の新宿分館から筑波分館への移転があったため作業が遅れ、現在も標本処理を行っているところである。小笠原諸島は申請者の採集調査中に世界遺産に登録され、今後は調査の許可がおりにくいことも予想されるため、本研究で集めた標本は非常に貴重なものとなる。 これまで解析した分のデータをまとめ、東海大出版会より学術書(黒潮の魚たち・共著)を出版した。また、同様に国際誌への論文の投稿があと一歩のところまで来ている。 現在は残りの標本処理を進めるとともに、すべての採集個体を含めたデータ解析、それらをまとめた論文の執筆、初年度に行った豆南諸島採集調査をまとめたモノグラフを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当館の移転があったため、標本処理作業に割く時間がなかなか取れず、全体的にその分遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度も調査が予定されているので、そこで採集する予定の標本処理作業、これまで得られたデータの解析、論文執筆を着々と進める。研究を遂行する上で障害になる問題は特にないため、ひたすら己の研究に没頭するのみである。
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