伊豆諸島と小笠原間に位置する無人島群・豆南諸島において、初年度2010年に行った調査に続き、2回目の調査を行った。前回調査時に採集をうまく行えなかった須美寿島を中心に、べヨネース列岩と合わせて2島で調査を行った。生物地理学的研究の中心的対象種であるアカハタは十分な個体数を採集でき、また前回採集できなった種を中心に多数の浅海性魚種を採集した。さらに、未記載種と思われる浅海性魚類数種を水中写真に収めることに成功し、研究者の手の入っていなかったこの海域にはまだまだ未知の魚種が生息していることを明らかにした。本調査で採集した魚体はすべて国立科学博物館の魚類学術標本ナショナルコレクションに登録、同様に採集した魚体から採取した筋組織は同館のDNA解析用組織資料コレクションに登録、撮影した標本写真および調査時の水中写真はすべて神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類写真資料データベースに登録し、自身の今後の研究のためだけでなく、世界中の研究者が利用できる形にした。 採集したアカハタを用いた伊豆諸島ー小笠原諸島間の浅海性魚類における生物地理学的研究の成果を、「黒潮の魚たち・松浦啓一編・東海大学出版会」中の1章として出版した。また、同研究の成果をまとめた学術論文を国際誌に投稿中である。さらに、豆南諸島の魚類相をまとめた学術論文も国際誌に投稿準備中である。
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