研究課題/領域番号 |
22770090
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研究機関 | 横須賀市自然・人文博物館 |
研究代表者 |
内舩 俊樹 横須賀市自然・人文博物館, 博物館運営課, 学芸員 (20463086)
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キーワード | 昆虫類 / ガロアムシ / 分類学 / 多様性 / 博物館 |
研究概要 |
昨年度までに収集したガロアムシ類約100個体を飼育し、適宜標本を作製、画像データを収集した。後述する採集個体を含む形態観察に際しては、高解像度実体顕微鏡(昨年度購入)に取り付けるカメラアダプタ等を購入し、画像データ収集と形態記録を強化した。前年度末に採集に成功した長崎県長崎市岩屋山産ガロアムシ類は、Silvestri(1927)の原記載(Galloisiana notabilis)以来初めてとなるメス成虫個体および中~終齢ステージの幼虫であり、「『終齢幼虫』によって原記載を行った」とする同論文の再検討を初めて可能にした。分析結果はSilvestri(1927)で記載されたオスの「終齢幼虫」が亜終齢幼虫であることを明らかにし、メス成虫の形態は、日本各地に広域分布するとされるG. nipponensisとは明らかに異なることを示したが、四国本島産の個体群(G. chujoiと推定される個体群。後述)が示す個体変異の中に納まり、四国・九州産個体群が同種である可能性を示唆した。これは上記地域のガロアムシ類についての初めての比較研究であり、日本昆虫学会(9月・信州大学)にて口頭発表した。 前述の四国本島産ガロアムシ類については、香川県女木島を模式産地とするG. chujoiが最も有力視されたが、Gurney(1961)による原記載は記載内容が乏しく、決め手を欠いていた。そこで、2011年6月および2012年3月に四国などの採集調査を実施し、専門家に教授いただいたトラップ法を併用し、12地域約20地点にわたって探索、香川県高松市女木島と愛媛県吾川郡いの町など5地点でガロアムシ類の採集に成功した。中でも、女木島でのG. chujoiの採集は、四国本島産個体群の分類解明につながる大きな成果であった(分析は2012年度に実施予定)。 上記の活動に伴って進めている分類資料コレクション(標本と採集・計測データ)は、現在所属機関において公開準備を進めている「博物館研究活動紹介ページ」の立ち上げ(2012年5月を予定)後に随時公開を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主に西日本(四国・九州)において模式産地を含むガロアムシ類の採集に成功したことにより、日本産ガロアムシ類の分類学的再検討を行う上で貴重な試料を入手し、画像・計測データを得、それをもとに学会発表を行うことができたため。.
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今後の研究の推進方策 |
模式産地を含む日本各地のガロアムシ類採集調査を進める。これによって新たに得られた試料・知見を蓄積し、分類学的再検討に関する研究論文・学会発表・Webにおける成果の公開を進める。一方、本研究が最終的な目標とする日本産ガロアムシ類の包括的な分類学的再検討においては、米国の研究協力者が進めている分子遺伝学的解析の結果を含めて検討を行う部分があるが、先方の解析結果が出るまでは、当研究代表者において形態学的・地理的データの収集・解析を着実に進めるとともに、標本と画像・計測データによる資料群を構築していく。
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