研究概要 |
相模湾初島沖の深海メタン湧出域に生息するシロウリガイ類とヘイトウシンカイヒバリガイの鰓の一部から抽出したDNA及びRNAを用いて,PCR法によりアルベオラータ生物群の18S rRNA遺伝子を特異的に増幅した。その結果,シロウリガイ類からはアルベオラータに由来する遺伝子配列は得られなかったが,ヘイトウシンカイヒバリガイからはアルベオラータに由来する遺伝子配列が得られた。得られた遺伝子配列を分子系統解析に供した結果,検出された遺伝子配列はマリンアルベオラータグループII(Marine Alveolate Group II:以後,MAG II)に属することが判明した。また,これまでに報告されているMAG IIの遺伝子配列の中で,今回得られた遺伝子配列に近縁なものは存在しなかった。シンカイヒバリガイの鰓におけるMAG II生物の局在を確認するために,得られた遺伝子配列情報を基に作成したDNAプローブを用いて,ホールマウントin situハイブリダイゼーションを行った。その結果,該当の生物がシンカイヒバリガイの鰓上皮細胞内に存在することが確認された。本研究により,RNAレベルでも該当の遺伝子配列が検出されたため,ヘイトウシンカイヒバリガイのエラにおいて得られた遺伝子配列に由来する生物はactiveであると考えられる。MAG IIの中で実体の判明している生物は全て寄生性であり,したがって,得られた遺伝子配列に由来する生物も寄生性である可能性が高い。
|