スフィンゴ脂質セラミドは今日、化粧品などの保湿成分として配合される脂質分子として、一般にも広く知られるようになった。しかしながら、ヒトにおける生合成酵素が明らかになったのは、まだ10年ほど前のことで、細胞内での分子メカニズムについては未解明の部分も多い。ほ乳類の一般的なグリセロ脂質の側鎖が炭素数16もしくは18の長鎖脂肪酸であるのに対し、セラミドは炭素数16の長鎖および炭素数24の特徴的な極長鎖脂肪酸を側鎖に持つが、その組成比は組織により様々である。皮膚には他の組織に見られない炭素数26以上の極長鎖および特徴的な水酸化を受けたセラミドが存在し、これらの機能的役割は大変興味深い。本研究は、セラミドの生成代謝酵素の解析を通して、皮膚におけるセラミドの機能的役割を明らかにする事を目的とする。我々は、皮膚のバリア機能に重要といわれている極長鎖セラミドの生成にセラミド生成酵素3(CERS3)が重要であることを明らかにした。また、側鎖の伸張酵素であるELOVLの解析を行い、極長鎖脂肪酸生成に関与する脂肪酸伸張酵素の活性がCERS3の活性により調節を受けている可能性を示した。また、皮膚に特徴的な水酸化を受けたセラミドであるフィトセラミドが、転写因子PPARの活性化を通して皮膚のセラミドの生成を活性化するフィトセラミドの機能的役割についての知見を得た。皮膚の保湿に重要とされるω水酸化セラミドを生成する新規酵素の解析については、今後も継続した研究が必要である。
|