本年度は、重金属公害の原因の一つであるカドミウムの植物細胞内での毒性の鍵となる細胞内金属イオントランスポーターAtNRAMP3及びAtNRAMP4の大量調製系の確立を目指して研究を行った。各ターゲット遺伝子と蛍光タンパク質GFLP-uvの遺伝子をタンデムにつなげ間をTEVプロテアーゼ切断サイトでつないだ遺伝子断片を作製し、大腸菌のタンパク質発現用ベクターpET26bに組み込んだ。これは、大量発現させた膜タンパク質を蛍光検出することにより、精製や性状確認のステップを簡略化するためのものである。得られた発現用ベクターを用い、膜タンパク質などの発現に適した発現用大腸菌C41(DE3)を形質転換し、各膜タンパク質の発現誘導実験を行ったところ、AtNRAMP3では、IPTGによる発現誘導を行った条件で、AtNRAMP4では、IPTGによる発現誘導を行わない条件で目的タンパク質の発現を確認することに成功した。また、各ターゲットにおいて、培地中に低濃度の鉄イオンを添加することによって発現量が増大することが示唆された。また、大腸菌の対数増殖期において、これらの膜タンパク質の発現は有害であることが示されたため、培地に0.5%のグルコースを添加することによって菌体の生育を補助している。発現させた膜タンパク質をn-ドデシルマルトシドを用いて可溶化し、蛍光ゲル濾過法により目的タンパク質の性状を調べたところ、各ターゲットにおいて適切な大きさを保って溶出されることが示された。現在結晶化に向けての大量調製を行っている段階である。
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