本年度は、重金属公害の原因の一つであるカドミウムの植物細胞内での毒性の鍵となる細胞内金属イオントランスポーターAtNRAMP3及びAtNRAMP4の構造解析に向けた研究を行った。本実験では、目的タンパク質のC末端側に蛍光タンパク質GFP-uvを融合させる形で大量発現実験を行っている。タンパク質の結晶化のためには、均一性の高い高品質タンパク質を得ることが重要であるため、ゲル濾過等で目的タンパク質を簡便に検出できるようにする系の確立は重要である。また高純度タンパク質を十分量調製するため、1-N末端側に6×Hisタグを融合させたコンストラクト、2-C末端側に10×Hisタグを融合させたコンストラクト、3-その両方を融合させたコンストラクト、をそれぞれ作製し、目的タンパク質の大量調製を行った。AtNR削P3ではN末端側及びC末端側にHisタグを融合させたコンストラクトで、AtNRAMP4ではC末端側にのみHisタグを融合させたコンストラクトで最も良好な目的タンパク質の発現が確認できた。どちらの場合においても、鉄イオン及び重炭酸イオンを培地中に添加した場合において、目的タンパク質の発現が増強されることが確認できた。膜タンパク質の発現量は一般的に少ないことが知られており、一定量の菌体から、最大の効率で目的タンパク質を回収するための発現系の最適化は非常に重要である。発現させた膜タンパク質をn-ドデシルマルトシドを用いて可溶化し、蛍光ゲル濾過法により目的タンパク質の性状を調べたところ、適切な大きさを保って溶出されることが示された。現在結晶化に向けた実験を進めているが、結晶は得られていない。良質な結晶を得るために、ターゲットとする膜タンパク質のホモログを好酸性好熱古細菌からクローニングし、同様の発現精製実験を行ったが、こちらに関しては目的タンパク質の発現が確認できなかった。
|