研究概要 |
本研究ではレチナールタンパク質(ロドプシン類)の光活性構造を観測するために、In-situ光照射-固体NMR測定システムを開発および利用し、その機能発現メカニズムを明らかにすることが目的である。 1.光照射システムの開発およびその利用によって、NMR測定中に試料を光励起することが可能となった。これによって、フォボロドプシン(センサリーロドプシンII)中のレチナール分子の光異性化をNMRの化学シフト変化として直接観測した。特にフォトサイクル中の活性中間体(M中間体)を捕捉し、そのNMR信号は多重線になっていること、また変異体の信号と比較しても、野生型のフォボロドプシンでは複数の状態が存在することが示唆された。 2.真正細菌由来のアナベナセンサリーロドプシンについては、光活性構造およびトランスデューサータンパク質との相互作用を観測するための準備として、タンパク質NMR信号の連鎖帰属を試みた。均一^<13>C,^<15>N標識したASRを脂質二重膜に再構成した試料を測定した。1次元^<15>N NMRおよび^<13>C-^<13>C相関スペクトルから、線幅の狭いよく分離したNMR信号が得られ、レチナール結合部位であるシッフ塩基の^<15>N NMR信号からASRのレチナールはAll-trans型の配座のみをとっており、脂質膜中のASRは極めて均一性の高いことがわかった。さらに、3次元NMR測定を行い、アミノ酸残基間および残基内のスピン系を構築し、連鎖帰属を試みたところ、膜貫通領域においては約85%の信号帰属を達成し、結晶構造では観測できなかったBCループの構造をβシート構造と示すことができた。またH/D交換の実験からタンパク質の細胞質側は脂質二重膜からやや突出していることも明らかにした。(Angew.Chem.Int.Ed.(2011))
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