研究概要 |
本研究では、レチナールを発色団にもつレチナールタンパク質の光活性構造を観測するために、In-situ光照射-固体NMR測定システムの開発およびそれを利用した光活性構造の解明を目的としている。 1.光照射固体NMR測定システムの開発により、負の走光性機能をもつ光受容体であるフォボロドプシン中のレチナール分子の異性化反応をNMRによって観測することに成功していた。同様の測定を様々な温度条件で行って詳細に分析した結果、化学シフト値で区別できる複数のM中間体が存在することが示された。さらに蓄積した光中間体の緩和実験や異なる波長の光照射などの実験を組み合わせて行い、光中間体の性質を理解することができた。また共役するトランスデューサータンパク質の構造変化に関しても、光中間体と同時に観測することに成功した。 2.アナベナ由来のセンサリーロドプシンに関しては、重水素交換法による光誘起構造変化の解析を行った。これまでに^<13>Cおよび^<15>N均一安定同位体標識したアナベナセンサリーロドプシンについてNMR信号の連鎖帰属を行い、細胞膜中での構造を決定した。この結果を基本として、光によるアナベナセンサリーロドプシンの構造変化を調べるために重水素交換実験を行った。この実験によって、光照射条件で調製した試料の相関スペクトルでは、暗条件で調製したものよりも多くのNMR信号が消失し、多くの残基で重水素交換が起きていることがわかり、これらはヘリックスB,C,F,Gの細胞質側に起きていた。光反応によってタンパク質の膜貫通コア領域に水が浸入するようなタンパク質の構造変化が起きていることが示唆された。このような構造変化がASRの光機能発現に関わっていると考えている。
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