研究概要 |
オロチジン一リン酸脱炭酸酵素ODCaseは、オロチジン一リン酸(OMP)をウリジン一リン酸(UMP)に変換する反応を10^<17>倍に加速する酵素である。この酵素は、結合した基質の炭素結合を歪ませることが知られている。本年度は、この「歪み」の反応触媒機構との関係を解明するために、まず、歪みの詳細な分析に取り組んだ。 まず、基質OMPの誘導体である6-methyl-UMPや6-amino-UMP,またOMP-methyl-ester, OMP-ethyl-esterなどとODCaseの複合体構造を精密化した。6-methyl-UMPのメチル基は、そのメチル基がピリミジン平面から大きく外れた歪んだ構造で、ODCaseに結合していた。6-amino-UMPとODCaseの複合体の基質結合部位はダブルコンフォメーション構造をとっており、基質と活性残基であるLys72のアミノ基が、別の活性残基であるAsp70との結合を取り合っていた。OMP-methyl-esterとOMP-ethyl-esterは、そのエステル基がピリミジン環から回転した状態でODCaseに結合していた。これらの構造を基に、MD, QM/MM計算を共同研究により行ったところ、OMPはそのカルボキシル基が歪んだ状態でODCaseに結合していることや、Asp70が酵素基質複合体を不安定化していることが示された。現在この成果を論文にまとめている。また、H23年6月の学会で発表する予定にしている。
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