研究課題/領域番号 |
22770104
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
齊藤 貴士 九州大学, 生体防御医学研究所, 特任助教 (00432914)
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キーワード | 蛋白質複合体 / X線結晶構造解析 / NMRスペクトル解析 |
研究概要 |
ミトコンドリアを構成するタンパク質の大部分は細胞質においてプレ配列がN末端に付加された前駆体蛋白質として合成される。プレ配列は15から70残基程度であるがその配列は多種類存在し、約5残基からなるコンセンサス(φχχφφ:φは疎水性残基、χは任意のアミノ酸残基)が明らかにされている。このプレ配列を最初に認識するのがミトコンドリア外膜に存在するTom20タンパク質である。そこでTom20が持つプレ配列への広い選択性を構造基盤の観点から明らかにすることを目的とした。弱い相互作用を克服するためにプレ配列中で分子内ジスルフィド結合を形成させ、ヘリックス構造を安定化する試みを行った。昨年度はD型システインを挿入したペプチドを用いた実験を行った。このペプチドもTom20に対する親和性が向上していることをNMR滴定実験によって確認し、その後このプレ配列ペプチドとTom20の複合体結晶構造解析に成功した。本年度はさらに約300種類の条件で結晶化スクリーニングを行ったところ、これまで得られた結晶系とは異なる結晶系で複合体の結晶が得られた。放射光施設でX線結晶構造解析実験を行った結果、高分解能での複合体構造の決定に成功した。その構造は、これまで報告した複合体構造と比較してTom20とプレ配列の相対的な位置関係はほぼ一致していたが、側鎖レベルでは新規の相互作用様式が用いられていた。同マの複合体において異なる結晶系で新たな相耳作用様式の構造が得られたことは、これまでに提唱している「Tom20によるプレ配列の動的認識モデル」を支持する結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度もTom20とプレ配列ペプチドの複合体新規安定化手法により、新たな相互作用様式の複合体構造を得ることに成功した。これは研究目的である「Tom20によるペレ配列の動的認識モデル」の証拠となり得る研究結果である。
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今後の研究の推進方策 |
分子内ジスルフィド結合を利用した複合体の安定化手法については、これまでの研究結果でほぼ目的を達成した。 そこで今後に研究では多様なプレ配列に着目し、これまで用いてきたアルデヒド脱水素酵素のプレ配列以外のプレ配列ペプチドを用い研究を進め、動的平衡認識モデルの普遍性について研究を進めていく。
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