研究概要 |
本研究は,海産無脊椎動物グミ(C.echinata)由来PFTである溶血性レクチンCEL-IIIの膜孔形成複合体のX線結晶構造解析により,病原性および毒性発現に極めて重要なPFTの膜孔形成メカニズムを原子レベルで明らかにする事を目的とし,以下の様に研究を実施した。 構造解析のためにグミ個体から蛋白抽出後,(1)アフィニティカラムクロマトグラフィーを用いた精製,(2)膜孔複合体化,(3)結晶化条件の検索・最適化,(4)X線回折データ処理・位相決定・構造決定と行うべき4段階の実験において,本年度は「(3)結晶化条件の検索・最適化」に重点を置き研究を進めた.結晶化条件の最適化により得られた結晶の放射光測定を行った結果,分解能2.9ÅのX線回折データを収集する事に成功した.結晶の空間群はC2,格子定数はa=219.8Å,b=228.7Å,c=133.0Å,β=127.1,Rmerge=0.100であり,この非対称単に中には,CEL-III膜孔形成複合体が7量体として1複合体存在している事が示唆された。得られた分解能は,原子分解能での構造解析を行うに十分な分解能であり,CEL-III膜孔形成複合体の構造解析を行うにあたり研究が大きく前進したと言える。 今後は,重原子誘導体もしくはセレノメチオニン化蛋白質の結晶化,およびそのX線回折データ収集,位相計算と進める事で複合体構造決定を行い,モノマー構造との比較から複合体形成メカニズムを解明するべく研究を進める予定である.
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