研究概要 |
本研究は、海産無脊椎動物グミ(C.echinata)由来CEL-IIIの膜孔形成複合体構造解析を目的として研究を行った。結晶構造解析を進めるにあたり、グミ破砕液上清を用いて糖固定化カラムによるアフィニティクロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィーによる精製の後、膜孔形成複合体化、透析、濃縮を行い、その精製タンパク質溶液を用い結晶化条件検索および条件の最適化を進めた。得られた結晶を用いて放射光回折実験を行った結果、分解能2.9ÅのX線回折データを収集する事に成功した。次に、構造決定の為の位相情報を得るため、各種重原子誘導体を作成し、native結晶と同様に放射光を用いたX線回折データを収集した。得られたnativeおよび各種重原子誘導体結晶のX線回折データを用い、各データの組み合わせによる位相計算を進め、nativeデータおよび白金誘導体回折データを用いた重原子同形置換法による計算の結果、良好な位相情報によるモデル構築が可能な電子密度図を得る事に成功した。得られた電子密度図から推定されるCEL-IIIの膜孔形成複合体構造は、CEL-IIIが7量体構造を形成し、その複合体構造においてdomain1,2がリング状に配置し、domain3がβバレル構造を含む膜孔を形成しているという、我々のグループが提唱したモデルを裏付け、かつ前例のない驚くべき構造であった。本研究成果は、CEL-IIIによる膜孔形成複合体構造解析において極めて重要な前進であるとともた、近い将来の構造決定および構造変化メカニズム解明がほぼ確実となった事を意味する、画期的な研究成果であると言える。
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