研究概要 |
固体NMRを用いたヌクレオソーム(分子量200 kDa)中のヒストン(分子量110 kDa)の動的な構造解析をおこなっている。固体NMR法では、試料調製において結晶化、可溶化が必要なく、溶液NMR法のような分子量の限界(20 kDa)は存在しない。そこで、これまで研究で用いられてきたX線結晶構造解析では解析できない運動性の大きい領域や溶液NMRでは測定できない大きな分子量をもつヌクレオソームについて、固体NMR法を適用し、ヌクレオソーム中のヒストンの運動性の高い領域の構造の解析を行う。その運動性の高い領域こそが、DNAの転写にかかわる非常に重要な領域で、その構造を解析し、機能発現機構の解明することを目指している。 本年度は超分子構造体(ヌクレオソーム)の動的構造解析のために適した試料調製法の確立に重点をおいて研究を行った。^<13>C,^<15>N標識したH2Aを作成し、標識していない他のヒストンを加えて、ヒストン8量体を作成し、さらにDNA146塩基対を巻いてヌクレオソームを作成した。そして、ヌクレオソーム約1mgを作成することに成功した。感度の悪い固体NMR測定では約20mgが必要になるので、スケールアップをするとともに5回は操作を繰り返さなければいけないことが分かった。固体NMRの試料を調整するためにはサンプルを固体化あるいは濃縮させる必要があるが、Mnなどの金属で凝集、沈殿させる方法が適していると考えられた。その方法ではヌクレオソームの沈殿がクロマチンファイバーに近い形になる可能性がある。また、今後の固体NMR測定のモデルとして、凍結乾燥した^<13>C,^<15>N標識したH2A単量体の固体NMR測定をおこなった。凍結乾燥したサンプルなのでスペクトルの質は悪かったが、単量体でも二次構造はヌクレオソーム結晶構造やH2A/H2Bダイマー中のH2Aと同様の構造をとることが予測された。
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