研究概要 |
RNAポリメラーゼIIによるDNA転写制御機構を明らかにするために、基本転写因子TFIIHとTFIIEの構造をX線結晶解析によって決定することが最終的な目的である。そのために、TFIIHサブ複合体(SSL1,TFB1,TFB2,TFB4)の精製を進めている。また、TFIIHと相互作用する基本転写因子TFIIEの大量精製も行った。TFIIHサブ複合体については、バキュロウイルスを利用して、昆虫細胞内で、4つのタンパク質(SSL1,TFB1,TFB2,TFB4)を共発現することで、サブ複合体を再構成した。Strep-tagを利用した精製により、サブ複合体の精製を行っているが、結晶化に適する試料の大量精製には至っていない。昆虫細胞の培養条件、精製法の検討が引き続き必要である。TFIIEについては、TFIIEを構成する二つのタンパク質TFIIEαとTFIIEβを大腸菌内で共発現することにより、大量発現、精製に成功している。具体的には、TFIIEαとTFIIEβを、それぞれにGST-tagとhis-tagをつけた組換え体として、大腸菌内で共発現を行い、TFIIEヘテロ二量体の大量発現を行う。グルタチオンカラムとNi-NTAカラムを利用したアフィニティークロマトグラフィー後、陰イオン交換クロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィーを用いて、高純度なヘテロ二量体を大量に調製することに成功している。精製されたTFIIHサブ複合体とTFIIEの複合体試料の調製も試みたが、安定な複合体を得ることはできなかった。サブ複合体に含まれない他のサブユニットがTFIIHとTFIIEの相互作用に重要であると考えられる。今後は、TFIIHサブ複合体とTFIIE、それぞれ単独で大量精製と結晶化を進める予定である。
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