研究課題
高圧力NMR法という3次構造変化の研究に優れた方法と分子選択標識技術を用いて、重合体内に存在するサブユニットの立体構造変化(コンフォメーション平衡)の全容解明と、4次構造変化の制御機構の知見を得ることを目的とした。対象はLys48,Lys63結合型ポリユビキチン(2-4量体)である。本年度は、1、CLOSED型配向のモデルとしての環状Lys48結合型ダイユビキチンの構造揺らぎ解析、2、Lys63結合型のダイユビキチンの解析、3、R2緩和分散NMR測定による構造揺らぎの解析(サントリー生命科学財団 菅瀬博士との共同研究)、4、各種ダイユビキチンの高圧力小角散乱測定を計画した。1、Lys48結合の環状型ジユビキチンの高圧力NMR測定の解析(化学シフト、R2緩和)を行った。高圧力下での振る舞いとして、単量体ユビキチンと同様な部位でR2値の増加が観測された。また本年度に環状型ジユビキチンの結晶構造が解明され、比較解析により2つのサブユニットの界面部位でもR2値の増加が生じていることが分かった。さらに2500気圧において1H/15Nの化学シフト値の多くは単体のそれと一致することが分かった。これらの結果からCLOSED型のモデルである環状型においても各サブユニットはN1→N2に転移し、さらに2つのサブユニット界面も十分に水和したOPEN型様になっていることが示唆された。つまり環状型ジユビキチンはCLOSED型配向モデルであるが、高エネルギー状態として水和したOPEN様配向との化学平衡にあり(自由エネルギーは解析中)、OPEN様配向は部分モル体積が小さい。N2構造をとることにより、OPEN様配向が安定化されることが分かった。さらに常圧における直鎖型、環状型のCleanex測定結果を解析し水和部位の同定を行った。2、Lys63結合型実験は実行できなかった。3、N2構造が安定化された変異体(Q41Nなど)を作成することに成功したため、R2緩和分散NMR測定によりN2構造のダイナミクス解析を先行した。その他、15Nスピン緩和測定やCleanex測定、立体構造解析などN2状態の構造とダイナミクス、安定性の解析を遂行した。今後、引き続き3、4、を展開する予定である。
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