合成ゼオライトのモレキュラーシーブを結晶化基板材料として用いた汎用的タンパク質結晶化方法の確立に向けて、以下の3研究を行った。1、モレキュラーシーブを用いたタンパク質結晶化機構の解明に向け、平成22年度ではモレキュラーシーブのタンパク質結晶化における広範囲な汎用性を確認した。28種類の異なるタンパク質(7.0-57.6kDa、pI4.4-11.4)を用いて結晶化を行った結果、23種類のタンパク質でモレキュラーシーブ表面から結晶が析出し、その汎用性が確認できた。それら結晶化に成功したタンパク質のサイズ、および等電点に特異性はなく、それら幅広い範囲でのタンパク質の結晶化を確認した。得られた結晶を用いて構造解析を行った結果、ヘテロエピタキシャル結晶成長特有の層状構造が確認できた。2、モレキュラーシーブを用いた効率的タンパク質結晶化技術の開発では、モレキュラーシーブをマウントした結晶化プレートを開発した。従来のモレキュラーシーブを用いた結晶化方法は、細孔径が異なる4種類のモレキュラーシーブをそれぞれ結晶化プレートヘマウントしていたため、その結晶化作業は時関と手間がかかった。そこで、より効率の良い結晶化を行うために、4種類のモレキュラーシーブ混合物を結晶化プレートウェルにマウントした結晶化スクリーニング用結晶化プレートを開発した。本プレートを用いることで、難結晶性タンパク質3サンプルの結晶化に成功し、それら結晶構造を決定した。3、新規タンパク質結晶化基板材料の開発を行った。モレキュラーシーブでは結晶化しないタンパク質の結晶化に向けて、モレキュラーシーブと同様にマイクロ孔を有し、また種類が豊富な有機低分子結晶をタンパク質結晶化基板材料として用いた。その結果、汎用性を有するタンパク質結晶化基板材料として、2種類の有機低分子結晶を見出した。
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